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間主観性と心理療法 2

更新日:2020年9月15日

 夫婦関係というものは、間主観的な概念です。


 夫婦は、夫と妻から成り立っています。夫と妻の関係を、夫婦関係と呼びます。


 まず、夫婦関係を客観から捉えた場合について考えてみましょう。


 何かしらの外部の基準を持ち出した時に、夫婦関係を客観的に評価することが可能になります。例えば、週に3回以上いっしょに夕飯を食べている夫婦が良い夫婦だ、という風に定義したとしましょう。この定義に当てはまっていれば良い夫婦だし、当てはまっていなければ良い夫婦ではない、という話になります。


 しかし、夫婦関係のよしあしを測るために適している客観的指標などというものが、果たして存在するのでしょうか? 週に1回しか夕飯をともに食べられなくても、素晴らしい関係性を築いている夫婦はたくさんいるのではないでしょうか?


 次に、夫婦関係を主観から捉えた場合について考えてみましょう。


 夫が自分自身のことを、「私は良い人だ」と言ったとしましょう。これは夫の主観です。また、夫を妻に置き換えて、妻が「私は良い人だ」と言った場合には、妻の主観です。「私の妻は良い人だ」と夫が言った場合は、夫の主観です。


 では、夫が「私たちの夫婦関係は良い関係だ」と言ったとしましょう。これは夫の主観です。一方で、妻が「私たちの夫婦関係は最悪だ」と言ったとしましょう。これは妻の主観です。この場合、その夫婦関係は、良いものなのでしょうか、悪いものなのでしょうか。どちらも主観としては正しい意見ですが、しかしそれらの意見は矛盾しています。


 これに対して、夫妻が口を揃えて「私たちの夫婦関係は良い関係だ」と言った場合はどうでしょうか。夫と妻それぞれの主観よりも、より信頼性が高まるように思えませんか。


 このように、複数の主観の間で合意が得られている状態のことを、間主観と呼びます。主観よりも信頼性が高く、客観の存在が疑わしい場合(=夫婦関係のよしあしを客観的に評価する、ということに対して疑問が残される場合)に、間主観の考え方が役に立ちます。

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