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間主観性と心理療法 1

更新日:2020年9月15日

 間主観性という概念があります。この言葉を理解するために、まず主観と客観について考えてみましょう(ただし、話を分かりやすくする目的で厳密さに欠けることがありますが、哲学的に厳密なところまで踏み込む積もりはありませんので、この点、予めご承知おき下さい)。


 主観というのは、当事者のものの見方や捉え方、認識の仕方やその中身ということを意味します。私はこう感じる、私はこう思う、というのが主観です。「私は」の部分を「あなたは」に置き換えても構いません。一人の人が、どう思った、どう感じたというのを主観と言います。


 ある食べ物について、Aさんは主観的に「これは美味しい食べ物だ」と言い、Bさんは主観的に「これはまずい食べ物だ」と言います。いずれも主観的な意見なので、いずれも正しいことを述べています。


 一方で、客観というのは、誰にとっても同じ意味合いだったり同じ価値を持つということを意味します。


 ある食べ物について、客観的に「これは美味しい食べ物だ」といった場合には、AさんにとってもBさんにとっても、あるいは別のCさんにとっても、それは美味しい食べ物でなければなりません。もしDさんが「私はこれを美味しいと思わない」と言ってしまった場合には、それは客観的に美味しい食べ物とは言えません。


 それでは、客観的な意味・世界・価値判断・認識といったものは、果たして存在するのでしょうか? AさんもBさんもCさんも、その食べ物を美味しいというかも知れないが、Dさん、Eさん、まだ見ぬFさんはどうだろうか? 全員の意見を集めるまでは、「客観的」などとは言えないのではないか?


 そこで考えられたのが、間主観性です。主観がそれぞれ独立して、お互いに影響を及ぼすことなく存在しているのだとしたら、間主観は、複数の主観が相互に影響しあいながら働いて、共通の世界を成立させている、ということを示しています。


 長くなってしまったので、次に続きます。

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