発達性トラウマ障害の診断基準は、A項目として、小児期および思春期の子どもの持続的・反復的なトラウマ体験への暴露があります。これに加えて、B項目からE項目の症状が6か月以上継続すること(F項目)、および、症状のために問題が生じていること(G項目)という項目から成り立っています。
A項目では、「人間関係における深刻で反復的な暴力の経験、もしくは目撃」、「主たる養育者の交代の繰り返し」など、極端に不適切な養育が含まれています。
B項目は、感情調節および生理的調節の困難が扱われています。興奮の調節に関する子どもの通常の発達的能力が阻害されていることによる症状です。
C項目は、注意および行動の調節障害です。注意の持続・学習・ストレスへの対処に関する子どもの通常の発達的能力が阻害されていることによる症状です。
D項目は、自己および関係性の調節障害です。個人的な自己感(sense of personal identity)と対人関係の領域における子どもの通常の発達的能力が阻害されていることによる症状です。
E項目は、トラウマ後症状スペクトラム(post-traumatic spectrum symptoms)です。PTSDの3つの症候群のうち、2つ以上の症候群において、各群の少なくとも1項目に該当する、ということです。
PTSDの3つの症候群とは、1.トラウマ的な出来事の再体験、2.トラウマに関する刺激の回避と精神的麻痺、3.持続的な過覚醒症状を指します。
つまり、発達性トラウマ障害は、アタッチメントの障害やPTSD症状、感情や衝動のコントロール、解離症状、注意や学習の困難、対人関係性の困難などを網羅的に記述した診断基準となっているのです。
参考文献: Van der Kolk, B. A., et al. (2009) Proposal to include a developmental trauma disorder diagnosis for children and adolescents in DSM-Ⅴ.
参考文献:飛鳥井望(2007)各論 心的外傷後ストレス障害(PTSD)(子どもを蝕む大人の病気), 小児科, 48(5), 758-762.
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