浮気が関与する、夫婦関係の治療、すなわちカップルセラピーを進める際には、極めて慎重に、何度も繰り返し確認して共有しなければならないことがあります。
それは、パートナーが浮気をすると決断したことについて、責任を取らなければならない人はいない、ということです。えっ、どういうこと、浮気した人が悪いんじゃないの、と思われるかも知れません。そうではなく、次の2つのことが、まったく等価に重要だということです。
一つ目は、パートナーが浮気をするという選択をしたことについて、浮気された人が責められてはいけないということです。当たり前のことのようですが、「あなたがそんなだから浮気されるのよ」というような形式で責められることがあります。これは誤りです。
二つ目は、浮気をされた人自身も、夫婦関係に貢献しているということを認識することです。その夫婦関係が、潜在的に、浮気に対する脆弱性を与えています。つまり、AさんとBさんが夫婦である時、AさんもBさんも自身の夫婦関係に影響を与えているのです。したがって、Aさん、Bさんの振る舞いが、どのように夫婦関係に影響していて、浮気に対する脆弱性が高まったのかを検討する必要があります。
例えば、浮気された人は、自身喪失したことに耐え続けていたかも知れません。このことは、情緒的な親密さや身体的な親密さを妨げたかも知れません。
コミュニケーション・スキルが足りないかも知れません。葛藤を恐れたかも知れません。夫婦関係の問題から撤退したかも知れません。こういったことが重なって、問題はいつまでも残されて、わだかまりが募っていたかも知れません。
ですから、浮気から立て直すプロセスの中で、夫婦は、浮気がどのようにして起こったのかということについての共通理解を持たなければなりません。けっして、浮気をした方が悪い、された方が悪いというような、単純な話ではないのです。
参考文献:Baucom, D. H., Snyder, D. K., & Gordon, K. C. (2009) Helping Couples Get Past the Affair. The Guilford Press.
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