心理療法やカウンセリングの場面では、セラピストは慎重に言葉を選んでいます。
治療的に最も意味がある応答は何か。迂闊な言葉で、クライエントさんを傷つけはしないか。限られた時間をどのように費やすことが、もっとも大きな利益をクライエントさんにもたらすことが出来るのか。いろんなことを考えながら話をします。
例えば、クライエントさんからこのような指摘を受けたとしましょう。
「前回の面接の時、先生は私のことを、本当には心配していなかったでしょう! 私の話をちゃんと聞いていなかったですよね!」
これに対して、セラピストの応答はさまざまです。
<そのことで、色々な激しい感情がわいてきたんですね>と答えるセラピストがいます。
<私がちゃんと心配することが、あなたにはとても大切なことなんですね>と答えるセラピストもいます。
いずれも、クライエントさんを援助するために選ばれた応答ですが、この後に展開される話は全く異なっていきます。どちらが優れているということはありません(というか、それぞれの立場の方が、自分の信奉するアプローチが優れていると主張します)。
どのような考えに基づいてクライエントさんを援助するかということによって、セラピストの言葉が変わるのです。
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